セキュリティってなんだろう?

企業のセキュリティシステム構築に参加していた元SEが、セキュリティについて考えてみた。

暗証番号の起源は?

暗証番号の起源は?

暗証番号という言葉には特別な響きがあります。

現在、日常生活のいろいろな場面に普及していますが、そもそもの普及のきっかけが銀行のATMシステムで用いられたからということもあり、なんだか暗証=お金にリンクしている、というイメージがありますよね。

訓読すると暗い証ですし、ちょっとおどろおどろしい印象です。

また、似たような言葉でパスワードというのがありますが、これは暗証番号ではないのでしょうか?「違いを明確にせよ」などと突っ込まれたら意外と正確に答えられないですよね。

このように、「暗証番号」や「パスワード」は現代人の生活に深く関わっているにもかかわらず、あまり理解されていない側面があります。

もちろん、ATMシステムなどに関わるメーカ(IT業界はスタイリッシュさを滑稽なほど追求するので、メーカというとメーカの人は怒ります。

ベンダと呼んであげましょう)に悪意があるわけではありませんが、ちょっと利用者を下に見ているかもしれません。

「難しいことすると、利用者は逃げちゃうからなぁ。

極力、中身は見せないようにしよう」という姿勢です。

もちろん、使いやすいものを作っていただくのは結構なことですが、「分かりやすく、使いやすいこと」と「問題の本質を隠蔽すること」は別のお話です。

そして、本質を理解せずに技術を用いるというのは実は大変危険なことなのです。

例えば、「電子レンジで濡れた猫を乾かそうとして殺しちゃった老婆」という都市伝説があります。

これは実話ではないそうですが、欧米の電子レンジメーカが「ペットを入れないでね」と注意書きしているのは事実です。

なんでもかんでも訴訟に持ち込んでしまうお国柄ということもありますが、これは問題の本質的な解決ではありません。

この手法を展開していくと、「濡れた子供を乾かしてはいけません」「ご主人を懲らしめる機械として適切ではありません」など注意書きばかりが無数に増えていくことになります(実際、最近の家電製品のマニュアルは、半分くらいこんなことが書いてあります)。

それよりも、「マイクロウエーブで加熱をするので、強力な電磁波に弱いものは入れないで」と書いた方がよいと思います。

この注意書きは難しいでしょうか? 確かに「猫を入れないで」よりは難しいです。

しかし、裸足で逃げ出すほどではありません。

利用者は馬鹿ではありませんから。

むしろ、「ペットは……」「子供は……」など100箇条も書かれてしまうより、よほど分かりやすいと言えます。

「ははぁ。

じゃあ、野菜は大丈夫なはずだけど、抗酸化物質が壊されちゃうからレンジはやめとくか」とか、利用者なりの判断をすることもできます。

重要なのは、問題の本質を知り、生活の様々な局面で応用を利かせられる能力を身につけることです。

これこそ、多くのセキュリティ事故を未然に防ぐ力になるからです。

「カーブに70km/h以上で進入しちゃダメだよ」→「怒られるから」と理解している人と、「カーブに70km/h以上で進入しちゃダメだよ」→「慣性モーメントがでかいから脱線するぞ」→「そういうしくみなら特に満員で重心が高くなっているときには脱線しやすいはず」→「よけい慎重にしないと」と理解している人とでは、安全性に格段の差が出てきます。

銀行口座などの事実上の「鍵」になっている暗証番号の本質を知ることで、安全に生活する力を向上させていきましょう。