不具合について。
業界用語というのはどんな業界のものでも分かりにくいものです。
航空業界の友達がよく「機材」というのですが、なんとなく小さいツールを予想させる語感のわりに飛行機のことを指していたりして、残尿感にも似た違和感を覚えます。
翻ってI T業界も分かりにくい用語では人後に落ちません。
アルファベットの3文字略語はもう諦めるとして、「不具合」 というのが非常に分かりにくい、というか確信犯的な用語です。
あいさつの「どうも」と同じで、取り敢えず何かトラブったときに、どんなシチュエーションでも使える便利な言葉です。
お客さんZ 「きみ、このハンバーガーにはレタスがはさまっていないよ」カウンターT 「あっ、ほんとですね。
何か不具合が生じているのかもしれません」お客さんZ 「不具合って、こういうのは欠陥品って言うのではないのかね」カウンターT 「いえいえ、決して欠陥品などでは……こうした不具合は相性でよくあることで… …」お客さんZ 「なに! 私とハンバーガーの相性が悪いというのかね。
私の責任にするつもりか」カウンタ- T 「いえ、お客様の責任ではなく、ひょっとしたらこういうハンバーガーの仕様なのかもしれません」お客さんZ 「仕様だと? この前食べたハンバーガーにはちゃんとレタスがはさまっていたぞ。
さっさとレタスを持ってこい!」カウンタ-T 「そう申されましでもお客様、これからレタスを追加インストールすると、オプション料金が発生いたします。
それでもよろしいですか? 」……まともな街角のまともなショップだったら殴り合いになりそうな状況がIT業界では日常的に現出し、みんなもそれを受け入れています。
第3章コンピュータはなぜ計算を間違えるのか?――計算のしくみとそれに付け込む人間の知恵